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発話 [発達障害のこと]

前の記事に引き続き…メタ認知について
1980年代の後半から社会的文脈の中での、他者や状況に開かれた関係性の中で機能するメタ認知研究が増加し始める。(略)その文脈でのメタ認知の働きは、(略)個人を超えたその場に参加するものの全体の状況を、一歩離れたところから鳥瞰的視点を働かせながら省察し、必要に応じて、全体の動きを方向づけるといった複眼的思考からのメタ認知機能が求められる。(P11)下線、私。
私は、発達障害の方の就労支援を背景としながら、この論文を読んでいる。発達障害者は、場の展開を読み取る・他者の思考状態を省察する・(場合によっては)自己の思考状態を省察することに困難を抱えている。それらは、脳の機能障害として、現在のところを医学的に説明されている。

複眼的思考を支えるひとつの具体例にメタ認知的発話があるという。
議論の場では、「あの~」「う~ん」「え~と」「でも」「だけど」といった“問いかけ”“迷い”“躊躇”“逆説的”な発話が頻繁に見られるが、その機能には少なくとも2つの機能が考えられる。(P11)
①(談話)連結詞…発話と発話を繋ぎ合わせ談話の流れを作っていく機能
②反論・疑問・葛藤の表明…他者、自己の発話に対して明確化を試みようとする機能
メタ認知的発話は、もともとそれ自体が何か特定の意味をもっていたわけではなく、他者とのやりとりという文脈の中で立ち現れてくるものであり、話者の心の状態や判断の微妙な意味を伝えたり、新しい視点やアイデアを模索したり、思考を整理したりしている状態や状況を表出する発話であり、他者との関係の文脈の中で初めて意味を持ってくるものである。(略)この発話によって、議論の場に参加している者は、考えの明確化、前提の問い直し、新たな根拠や理由の探索、考える範囲の見直しなどがもとめられ、それにより、今考えるべき思考の対象や流れを把握することができるし、そこに自ずと秩序も生まれてくる。このように他者・状況に開かれた文脈で機能する適応的なメタ認知は、自己の閉じた確固たるシステムではなく、他者や状況との間に分かち持つ分散システムとして機能する。
いわゆる雑談の効用である。キャリアカウンセリングの場面でも、クライアントが「あの~」「う~ん」「え~と」「でも」「だけど」といったことばを発することがよくある。また、あるカウンセラーによれば、クライアントがそのようなことばを発するカウンセリングはサービスが高いという。

つまり、うまくことばにできないことをクライアント自身が上記の①または②で懸命に補っている状態である。そして、ことばにできないことをカウンセラーとともに、ことばにしていくプロセスがカウンセリングである。だから、いわゆる「傾聴」も、クライアントの発話を促すためのものである。

考えてみれば、このようなことは発達障害の社会性獲得の訓練のひとつであるが、健常者にも同じことがいえる。例えば、複数のひとが集まってブレーンストーミングをしたり、打合せをしたりするのは、<新しい視点やアイデアの模索><思考の整理・考えの明確化><前提の問い直し><新たな根拠や理由の探索><考える範囲の見直し>など、今考えるべき思考の対象や流れをつくっているのである[猫]
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