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けっか [読書した履歴]

悪循環の現象学―「行為の意図せざる結果」をめぐって (リベラ・シリーズ (1))こんな本を買いました。

『悪循環の現象学』
(長谷正人著 1991年4月 ハーベスト社)

「悪循環」とは、副題にある「行為の意図せざる結果」を生む状態である。「行為の意図せざる結果」を生むとは、ある行為がその行為の意図の発現を拒む行為となっていることである。

「悪循環」はよく使うことばである。本書は、その「悪循環」をテーマにした本である。珍しい本だ。それゆえに、飛びつくように買った。なぜならば、わたしの仕事はつまるところこの「悪循環」をどうとらえ、どうそれを緩めたり、止めたりするかにかかっていると思うからである。

「悪循環」を絵で表すと、自分の尻尾を食べるトカゲか?

自分が生きるために食べるが、食べているのが自分の体なので生きていくことができない。つまり、食べるという行為が、その行為の意図(=生きる)ということを拒むことになってしまっている。

本書の例を二つ紹介する。

「私嫌われ者なの」
嫌われたくない人が周囲にそう言うことでどんどん嫌われていく。

「自発的になりなさい」
そういわれて例えば勉強したら自発的ではない。かといって、なにもしなかったら指示に従っていない。どちらにしても、背くことになる。

実は、これらの内容には問題はない。しかし、ある関係性のもとでこれらの内容が発話されると、そのとたんにあの「悪循環」になってしまう。つまり、「悪循環」は言明の内容と関係の問題、もっというと関係に問題があるのである。これは凄い発見ではないか。

例えば、ニートや引きこもりの子とその親。この関係は奇妙である。二人ともうすうす変だと気づきながら、どんどん関係が悪くなる。「行為の意図せざる結果」を生む連鎖が止まらない。

では、このようなときどうすればいいのか?

本書は、ユーモアだという。「悪循環」にユーモアをもたらすことがそれを失調させる手立てとなるという。突拍子もないことのようにも聞こえる。しかし、実感としてわかる。理論的にはわからない。でも、本書を読めばそれが少しでも論理的にわかるようになる。そういう本だ。
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