SSブログ

貧困 [読書した履歴]

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)『反貧困』 湯浅誠著 2008年4月発行

度肝を抜かれたのが、アマルティア・センという経済学者の貧困論の引用文。
P74
「貧困はたんに所得の低さというよりも、基本的な潜在能力が奪われた状態と見なければならない」
「所得の低さ以外にも潜在能力に(貧困の方へ)影響を与えるものがある」

潜在能力はピンとこないが、選択の自由とか自由度という意味である。

上記の2つの文言は、貧困の新しいメルクマール(基準)だ。裏を返せば、“豊かさ”の指標をも明示している。つまり、単に所得を上げるだけでなく、望ましいさまざまな生活状態に近づくための潜在能力を上げていくことが、貧困から抜け出し、幸福をもたらすことになる、というわけである。

湯浅氏は、アマルティア・センの潜在能力溜めと言っている。溜池の「溜め」である。大きな溜池をもっている地域は、小さい地域よりも深刻なダメージを受けない。衝撃を吸収する緩衝材の役割をはたしてくれるという。(うまく表現するもんだ!)

そして、溜めとは、お金以外にも、頼れる家族、親族、友人などの人間関係もそうだし、「なんとかできる」という自信も精神的な溜めであるという。

しかし、そういう溜めというものは目に見えない。だから、援助職のひとは、“見えない溜めを見る”ように努力しなければいけないと湯浅氏はいう。まさに至言である。(しかと、受け止めたでござる[猫]

<まとめ>
貧困とは、溜めが総合的に失われた/奪われた状態
貧困とは、他の選択肢が等しく選べず、不利とわかりながら他方を選ばざるを得ない状態
nice!(0)  コメント(2) 
共通テーマ:仕事

nice! 0

コメント 2

名古屋の虎

この本、わしも買いました。でも、まだ読んでない。こういう内容の濃い本はなかなか読みづらい。

アマルティア・センの潜在能力は確かに画期的な概念です。が、今ひとつ自分の中には落ちてこない。潜在能力という日本語が分かりにくいかも。湯浅氏はこれを「溜め」といっているのですか? ほーー

セン自身が何冊か本を出していて本屋や図書館で見てみたが、小難しい専門書でああり、歯が立ちそうになかった。
by 名古屋の虎 (2008-12-17 18:54) 

myjob


この本をなぜ買ったか? 

それは、湯浅氏が東大大学院で戸坂潤を研究していたと知ったからです。湯浅氏に戸坂潤の思想・哲学がどう染み込んでいるかに関心がありました。

それはともかく、本書はⅡ部構成。。Ⅰ部は「生活保護」に纏わる話。Ⅱ部は「反貧困ネットワーク」の活動紹介が中心です。

Ⅰ部が面白かったです。Ⅱ部は批判精神が溢れています。ここが戸坂潤の影響かもしれません。政府の政策に対しても、理論的に対抗しようという姿勢が読みとれました。

湯浅氏の活動は、運動的スタイルの色が濃いように感じます。しかし、NPO法人自立生活サポートセンター・もやいは、月額60万円の人件費があり、それを4~5人に分配しているとのことです。そのあたりは、ひとつのビジネスモデルとして参考にしたいと思いました。

by myjob (2008-12-21 13:54) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。