「好き」を“直線的に”「仕事」に結びつけることはできないと思ふ [キャリアカウンセリング]
私のキャリアカウンセリングは傾聴を重視する。だから、指導めいたことは一切いわない。むしろ、傾聴しながらクライアントの「関心」「能力」「価値観」を一緒に整理するだけである。しかし、そのことである方向(コンセプト)が見えてくる。
まず、「関心」について。これはカウンセリング初期の段階で意外と聴きやすい。例えば、「あなたの好きなことは何ですか?」とか「興味のあることは何ですか?」の答えを聴く。すると、最近の若い人は「音楽が好きです」と答えるひとが多いが、さまざさま答えが返ってくる。
しかし、この「好き」から「仕事」を直接結びつけることはほとんどない。なぜならば…
①確かに「好き」を「仕事」にすることはいいことである。だが、「好き」を「仕事」にすることはそうたやすくない。
②「好き」は、“感性(センス)”と“気分(フィーリング)”である。これは、意志ではない。職業選択というものは、自分の意志で決めるものである。したがって、感性や気分で職業は決められない。
③「好き」と「仕事が合う」はイコールではない。なぜならば、「仕事が合う(合わない)」は自分が決めることではない。つまり、他者が決めることである。冷静な他者が意志決定することである。
しかし、「好き」から「仕事」を間接的に、迂回して結びつけることはある。まず、「好き」のなかの選択肢を広げる。さらに、就労体験で試してみる。それを繰り返すことで「好き」が後付けで見えてくる。
どちらの行動が適職をみつけるためにはいいか? [キャリアカウンセリング]
適性とは何か? ある仕事に適した特性。ある(人の)特性に適した仕事。
適合とは何か? 条件を満たしたり、状況に調和したり、目的の実現に役立ったりすること。
適性も適合も、簡単にいえば<当てはまる>ことである。
適応とは何か? 状況や環境にうまくなじむこと。
適用とは何か? 当てはめて使うこと。
簡単にいえば、適応は<慣れる>、適用は<当てはめる>ことである。けれども、この二つはかなり違う。なぜならば、適応とは社会的圧力に不本意ながら従う行動である。しかし、適用は社会的圧力から離れて自分の独立した判断で自由に行動することである。
では、どちらの行動が適職をみつけるためにはいいか? それはまず適応<慣れる>である。
なぜならば、仕事と特性の条件や要求がぴたりとは合わないからである。つまり、仕事と特性の間に差異や違いがない状態はない。むしろ、その差異や違いを認めないのであれば適職をみつけることはできない。いい換えれば、適職をみつけることは、その差異や違いを認めることである。
ちなみに、適性と似た言葉で相性がある。相性とは、二人の好み、考え方や性格などが互いに合うかどうかということである。合うとは差異や違いがない状態である。しかし、二人の間に差異や違いがない状態はない。むしろ、結婚とはその差異と違いを互いが認めた結果である。
それでも話を聞き続けるという選択肢がある [キャリアカウンセリング]
2007年4月15日付けの北日本新聞の「わが心の一冊」に、富山大学保健管理センター長・教授の斎藤清二先生の記事が掲載されていた。
先生の一冊は『カウンセリングと人間性』(河合隼雄著)であった。また、その著書のなかのひとつのエピソードが引用されていた。
それは、女子大生が親元を離れるか否かの二者択一に思い悩む事例である。そこで、河合氏は「みなさんならどう忠告するか」と問う。しかし、先生は「答えがまったくわからなかった」という。
河合氏の答えは「まだ話をきいてゆこうと思います」だった。その答えに先生は目からうろこが落ちた。なぜならば、「実際は選択肢のどちらをえらんでもうまくいかないことも多い」。しかし「それでも話を聞き続けるという選択肢がある」という発想が当時(約25年前)の先生にはなかったからだという。
会話を続けるという第三の選択肢そのものが治療であるという発想は、先生のカウンセリングの原点だという。それは、むしろ、カウンセリングに携わるものの原点であると思う。
対立評価を提出して、複数の論証を検討してみる。 [キャリアカウンセリング]
論証の適切さは、根拠と導出の適切さから評価される。
そのうち根拠の適切さの評価は、意味規定、事実認識、価値評価の三つの観点から評価される。
そのうちの価値評価は、大きく分けて「よさ」と「べき」の二種類がある。
価値評価の適切さは、論証の適切さと対立評価という二つの観点から評価される。
そのうちの対立評価は、提示された論証とは反対の結論を導くような他の評価のことである。
対立評価を提出して、複数の論証を検討してみる。そして、どれがもっとも説得力をもつかを決める。
このプロセスをわれわれは避ける傾向がある。しかし大切なプロセスである。職業選択においても。
MBTIについて勉強してきました。 [キャリアカウンセリング]
アメリカのブリッグスとマイヤーズ(親子)がスイスの精神科医ユングの性格類型論をもとに、1962年に開発したものがMBTIである。
MBTIは、性格とこころの向きと態度の側面から見る。性格は、二つある。一つは、もののみかた。もう一つは、判断のしかた。そして、こころの向きは、関心の方向である。態度は、外界の接しかた。あわせてこの四つの指標で表され、2×2×2×2=16で、16のタイプに類型化する。
この場合、四指標はそれぞれ二律背反(二つが両立しない、しかも二つが補完しあう関係)の言葉をもつ。以下がそれである。
もののみかた 感覚><直観
判断のしかた 思考><感情
こころの(エネルギー)向き 外向><内向
外界との接しかた 判断><知覚(私的には、受容)
これらを組み合わせると、16タイプのうちの1タイプになる。例えば、感覚・思考・内向・判断のタイプのひとは、「実直、静かで……」という特徴が結果として出てくる。しかし、そこで終わるわけではない。この結果を自分で吟味しながら、しっくりくる、つまり自分の納得できるタイプを見出すプロセスがある。カウンセリングでは、結果のフィードバックをカウンセラーが支援する。そして、自己理解を深めたり、対人関係を良好にする材料にする。
MBTIの特徴は、特性論(定量的=量や程度)ではなく、タイプ論(定性的=質やカテゴリー)に基づくところにあるようだ。だから、結果がはっきりしている。曖昧さが少ない。しかも、その前提がユングである。だから、科学的に立証されており信頼性も高い。
しかし、だからといってMBTIを信用していいのかというとそうではない。むしろ、結果がはっきりして曖昧さが少ないように見えるところに警戒すべき点はないか? たとえば、四つの指標のそれぞれの言葉(感覚・直観・思考・感情・外向・内向・判断・知覚)の意味をうかつに理解してはならない。つまり、この点はひとりひとり独自の解釈が可能である。だから、この点についての適切な説明がないといけない(私が知らないだけかも。だとしても、議論が可能のような気がする)。したがって、取扱注意な性格検査だと思った。
適職診断-そのためのツールをどう活かせばいいのか? [キャリアカウンセリング]
みなさんは、適職診断の検査をなさったことがありますか?
私は、カウンセリングでアメリカのキャリアカウンセリングの専門家ジョン・L・ホランドの適職診断をよく使います。この診断は人の基本的な性格と、それに対応した職業群のマッチング度合いをみていくものです。つまり、性格と職業群が一致していれば、適職に近くなるというものです。
ホランドは、人の基本的な性格を次の6つに分けました。
①現実的
②研究的
③芸術的
④社会的
⑤企業的
⑥慣習的
今回は、このうちの⑥慣習的に対応する職業群をみていきます。
職業群例)税理士・公務員・事務員
仕事内容)定まった方式や規則に従うような仕事や活動
必要能力)高い事務処理能力
人的特徴)協調性がある・自制心が強い・几帳面・粘り強い・和を重んじる
どうでしょう? ここに、公務員が入っています。公務員志望の方はどう感じましたか?
「やっぱり、俺、公務員にしよう」と思いましたか?
キャリアカウンセリングでは、さまざまなアセスメント(職業適性検査)を行います。しかし、それを額面どおり受け取ってはいけません。あくまでも、参考程度に止めるのが基本です。できれば、その結果をカウンセラーと話し合ってください。
なぜならば、公務員が上記の必要能力や人的特徴がありますとあります。しかし、そうでしょうか?むしろ、今から公務員はもっと冒険心をもった、いわば営業マン・起業家的な特徴が必要になってくるのではないでしょうか。このように仕事の内容は刻々と変化します。つまり、悲しいかなアセスメントが現実に追いついていないということもあるのです。
スピードを要求されるっていう「スピード」って何だろう [キャリアカウンセリング]
ある経営者と雑談中、「スピード」について話が及んだ。そこで、経営者は「それは考えるスピードだ」と言った。私はなるほどと思った。例えば、手の早さ、歩く速さはそう大した違いではなく、むしろ先が読める人がいい仕事ができるのかも?と思ったからだ。
ところで、別の勉強会で「聞くスピードは、話すスピードより速い」と聞いた。
そこで、私は二つの話を合体させ、ブラスαして、次のような公式を作ってみた。
スピード=話す<聞く<考える<感じる
だから、…。どういうわけではないのですが。
なぜ「頑張れ」といってはいけないのか? [キャリアカウンセリング]
最近、子どもに「頑張れ」と簡単に、不用意に言ってはいけないとよく言われる。
「頑張れ」は、辞書をみると、「いっしょうけんめいに努力せよ」という意味である。
したがって、「頑張れ」は、子どもを自分を責めたり追いつめるメッセージになる?
そうだろうか。もう一度、自分なりに問うてみる。
問)なぜ「頑張れ」といってはいけないのか?
答)「頑張れ」=「失敗するな」と受け取る場合があるから。つまり言う意味と受け取る意味のズレ。
しかし、本来の「頑張れ=努力」は、失敗しないことでなく、失敗しそこから学ぶことではないか。
事例紹介①「常に良く見られたい、でも…」 [キャリアカウンセリング]
キャリアカウンセリングは、通常カウンセラーとクライアント(相談者)の一対一です。したがって、そこでのやりとりは他者にはまったく知られることはありません。また、カウンセラーには守秘義務があります。つまり、そこでのやりとりを他者に漏らすことは倫理上禁じられています。
今回、私のカウンセリングでのやりとりの一部をクライアント本人の許可を得た上でご紹介します。
尚、便宜上●でサブタイトルをつけました。又、流れがつながっていない部分があります。
>=がクライアントの言葉、何もなし=私の言葉です。
長くなりますので、●の項目を順に先にご紹介します。
主訴→やりたいこと→できること→「作り込んだ自分」と「素の自分」→不安と焦り→両親との関係
(以下、やりとり)
●主訴
>今、正直何をすべきなのかもよくわからない感じです。今はやりたい仕事より出来る仕事なのかな? とか考えています。やはり、仕事の方向性を変えた方が良いのでしょうか。
●やりたいこと
>私のやりたい仕事は、誰かの役に立つ仕事です。なぜならば、「何かをしてあげたい」という気持ちが人より強いと思います。もちろんそういう事が好きなのもありますが…。
そういう事とは、人と直接接して、その人の役に立つことが好きということでしょうか。
>そうです。例えば、あるディサービスのボランティアに行ってた時は、少しだけ生きている実感がありました(大袈裟かもしれませんが…)特に何をしている訳では無いんですけどね。
なぜ、特に何かをしている訳ではないのに、生きている実感があったのでしょうか。
>かなり身勝手な事なのかもしれませんが、自分が安心したいのかもしれません。つまり、「誰かの役にたつ」=「自分が安心する、自分の存在意義を確認出来る」そんな感じです。
他人へ何らかの行為をする→自分の存在意義を確認する→自分を安心させる、という感じですか。
●できること
>その一方で、仕事を選ぶときに自分の出来る事からとは思ってはいます。前までは、早く自立したい、だから正社員に・・という気持ちが強くありました。しかし、(早く自立したい、だから正社員に・・)このような気持ちが無くなったって言えば、嘘になりますが…。
「早く自立したい」と強く感じているのですね。
>今の現実を考えたら無理な事なのかもしれません。だから、今は自分のできる事からするのが自立への一番の近道のような気がします。無理をして、また転んだら(体調を崩したら)また一から出直しになります。でも少し前までしていた派遣の仕事は、なんとか続いたんです。だから、むしろ次に繋がる事なら収入面のことは重要視しません。
以前なさっていた派遣の仕事はできた。その派遣の仕事は、具体的にはどんな仕事ですか。
>仕事の内容的には難しい事ではなくて、時間的にも短かったですし、体力的には問題ないと思いました。でも一番の続いた要素は、精神的に負担が軽かったって事だと思います。仕事をするのは、ほとんど1人でしたし(たまに2人の時もありました)、他の方と接する事が殆どっていって良いほどありませんでした。したがって、仕事の内容がどうとかより、余計な事(人間関係など)を考えなくてすんだのが良かったのかと思います。でも正直また同じ仕事を…って言われると考えてしまいます(考えてる場合じゃないんですど)でも、今できる仕事はこのような仕事くらいしかないのかもしれません。
●「作りこんだ自分」と「素の自分」
話は変わります。仕事をしているとき、あなたは同じ職場の上司ではなく、「同じ立場で仕事をしている人と接することがすごく苦手」ということをお聞きしましたが、もう少し詳しく聞かせてください。
>そうですね。自分と近い立場に居る方です。
自分と近い立場に居る方ですか。それは、どうしてなんでしょうかねぇ。確かに以前お聞きしたときも、ミーティングで意見を求められること、職員の前で何かを話すことが苦手とお聞きしました。具体的にはどの辺で負荷を感じるでしょうか。
>ミーティングに限らず普段の会話も苦痛というか苦手です。
普段の会話も苦痛ですか。ただし、自分と近い立場に居る方との会話がそうなんですね。しかし、その一方で利用者さんやお客さんは苦にはならない。上司のような自分より責任の重い立場の人ともそれほど苦にならない。その違いはどこにあるのでしょうか。
>上司などから、仕事の事で怒られたりするのはもちろん嫌ですが、仕事なので仕方の無い事だと思っています。一番の違いといえば、「自分を良く見せようとしてしまう事」かもしれません。
ほぉ~、なるほど。「自分を良く見せようとしてしまう事」ですか。しかも、自分と近い立場に居る方に。
>つまり、自分と近い立場に居る方(同じ職場の職員さんや友達など)には「常に良く見られたい」とかと思ってしまう。
ふむふむ。「常に良く見られたい」と。
>嫌われたくない。だから、相手に合わせて気を遣ったりした「作りこんだ自分」がそこにいるんです。
なるほど。嫌われたくない。だから、常に良く見られたい。それで、相手に合わせようとする。
>でも、 それが実は苦痛なんです。でも、そうしないとやっていけないと言うか・・・・
それというのは、「作りこんだ自分」が苦痛ということですか。
>ご老人や子供さんなどにももちろん気は遣いますが、お年寄りや子供と接するのは好きなんです。なぜならそこでは、「素の自分」で良い自然体で居られるんです。つまり、「良く見られたい」とかってあまり思わないんです。その部分が大きい様な気がします。
なるほど。すごく腑に落ちます。「素の自分」は自然体で、「作りこんだ自分」には負荷がかかる。
>頑張ろう!と思えば思うほど上手くいかなくなるんですよね。ほんとうに厄介というか、困りものです。それに加え、余りにも調子が良い時と悪い時の差が激しくて安定していません。だから、最終的に誰かに迷惑をかけてしまうのではないかと思っています。それなら、逆に何もしない方が良いのかなとも思ったりします。そうなると、どうしたらよいかよく分かりません。
●不安と焦り
>不安や焦りというのは、何もしてない事に対しての不安や焦りです。
そうですか。確かに、何もしていないときは不安ですね。何もしていない。何にも属していないというときは、誰かに「今、何してるの?」 とか言われたら答えに窮します。しかも、こう聞かれるのは実は結構きつい。それによって傷つくことも多いと思います。
>そうなんですよね、恥ずかしながら、「今何してるの?」ときかれて、数回、嘘を付いたことがありました。そして、その後で凄く罪悪感で一杯になったりして
そうですか。嘘を付いたことに対して罪悪感まで感じてしまったんですね。しかし、嘘は悪いことでしょうか。場合によっては嘘でもいい(嘘じゃない程度の嘘なら尚良い)のではないですか? それで相手を納得させることが言えたら、少なくとも何も言えないより自分防衛できるのではないでしょうか。例えば、「私は○○で○○をしています」と。
>その時の嘘が唯一の防衛策だった様に感じます。
「嘘も方便」という言葉があります。それは「嘘も場合によっては方法として使われてよい」という意味です。話を整理すると、何もしていないことに対する不安もあるし、何もしていないと「何も答えられない」という怖さもある。だから、何かをしなければいけないと思い焦ってしまう、ということでしょうか。
>確かにそういう部分もあります。しかし、その他にも、将来の事とかを考えてたりすると不安です。言い出したらキリがありません。それで、色々な事を考えてしまうとさらに不安になり、焦ってしまいます。焦らず…分かってはいるんですけど、焦った所で何も変わらない事も、焦ると逆効果になる事も分かってはいるんですけど、やっぱりどうしても色々考えて焦ってしまいます。
●両親との関係
話を変えます。家族の理解は得られていますか。
>両親は、仕事をして欲しいそんな気持ちはもちろんあると思いますが、私の前ではあまり口に出しません。自分のことは理解してくれていると思います。また、私はそういう親に感謝しています。
周りにあなたの話を聞いてくれる人や支援してくれるような人や居場所のようなものはありますか。
>特にありません。しかし、今話をしていて思ったのですが、私みたいな人間でもたくさんの人に支えられて生きているんだなと改めて実感いたしました。それと、自分の言いたい事を正確に表現するのって難しいですね。頭では言いたい事がまとまっているのに、言葉にするとなると、これで良いのか?って思ってしまいます。
(以上)
本当に思っていることを言うためにどうするか、が大事 [キャリアカウンセリング]
先日、ある臨床心理士であり大学教授の講演会に参加した。
講演のあと、私は2番目に次のように質問した。
「先生が考えるキャリアカウンセラーの存在意義とその役割についてお聞かせください?」
実は、この質問はできのいい質問でない。なぜならば、演者の話したことの論点について反論するわけでもなく、説明不足を補足してほしい質問でもなかったからである。半ば、話と関係のないところからの質問を投げかけたのである。しかし、私はどうしても聞きたかった。
なぜ、このような出来事を枕にしたかというと、「働きたくても働けない」「関係作りが苦手というか苦痛」という人は、自分が本当に思ったことや感じたことを相手に言うことができない。
さっきの私の質問は、演者が聞かれて嬉しい質問ではない。演者が何を聞いて欲しいかを考えてからした質問ではまったくない。自分がどうしても聞きたいことを言っただけである。
だから、場は盛り下がった。
以下は、山田ズーニー著『17歳は2回くる おとなの小論文教室。Ⅲ』河出書房新社からの引用。
「本当に想っていること言うために、どうしようか?」
「この問いを手放して場に迎合しようとしたとき、すべてを失うだろう。話がすべっても、場を引き潮のように引かせても、私はこの問いから先だけ(つまり、この問いの前に相手のことや、こういう時はああ言おう、こう言おうを考えるのではなく)を、悩んでいこうと思う。」
今でも、質問してよかったと思う。それによって、今まで分からなかったことが2つ分かったから。
ひとつは、質問の回答。
もうひとつは、司会者の役割。なぜならば、私の質問をフォローしてくれたから。
日本社会は、ある起点から論理(の方向)が逆転したんだ [キャリアカウンセリング]
『乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない』橋本治(集英社新書)2005年11月
著者は、日本社会がある起点で「論理が逆転した」といいます。
それに対処するには、「(時間を)巻き戻し、その起点を探り、そこに戻る。(中略)その更に以前のあり方を探って“矛盾”という結果に至らない有効な可能性を拾い直す…」と答えています。
私は、「働きたくても働けない人」と多く関わっています。これを流用すると、「どこでくじけたか」「どこで弱くなったか」「どこでダメになったか」、一旦そこに戻る。そして、それ以前のあり方(=多くは親子関係、友人関係など)が「どんな状況か」「どういう心情か」「どういう行動をとったか」をクライアントと一緒にみていきながら、現在の状況に至らない有効な可能性を拾い直す作業が必要ということになるかと思います。
確かに、バブル崩壊前後の1990年以降はいろんなところで旧来の日本の論理が逆転しました。
例えば、それ以前は、「我慢」はよいこと。それ以降は、できればしない方がよいこと。
それ以前は、和を大切に。それ以降は、個人が自立(自律)して生きなければいけない。
それ以前は、寡黙さ、口答えしないことがよし。それ以降は、言語能力(口が達者)の方がいい。
などなど…。
それに乗り遅れた人あるいは乗り急ぎ過ぎた人が立ち止まってしまっているのかもしれません。
どこで乗り遅れたか、どこで乗り急いだか、それを探り、そこからもう一度生き直すという手立てを考える。それもありだと思います。しかも、それはキャリアカウンセラーの仕事でもあると思います。
キャリアカウンセリングの支援の限界と行動範囲 [キャリアカウンセリング]
昨日(11月18日)、NPO法人日本キャリア開発協会の研修に富山から大阪まで行って来ました。講師は、臨床心理士の大野英一先生。講演1時間。事例研究2件3時間という構成でした。
大野先生によると、働く人の63%がなんらかの精神的な疲れを感じ、35%が慢性的(3ヶ月以上)な気分の落ち込みなどの症状を呈している(こころの病気の予備軍)そうです。
このような状況で、キャリアカウンセラーとしてどこまでクライアントに介入すべきかを考えました。
結論は、キャリアカウンセラーはメンタル面の問題を抱えたクライアントに、社会との橋渡しをするのが役割ということでした。つまり、クライアント本人自身もできない、その家族でもできない、お医者さんもできないそういう部分に介入していく部分が仕事だということです。
実は、キャリアカウンセラーという職業は、精神科医、心療内科医、臨床心理士、産業カウンセラーとは違います。それは、メンタル面の不調が認められるクライアントに対して治療行為やそれに類する行為は社会的に求められてはいませんし、してはいけないことになっています。なぜならば、そのような場合は、早期対応が早期回復を最優先するからです。メンタルな部分でキャリアカウンセラーで時間を費やすよりメンタルの専門家に任せるべきだという考え方が常識となっています。だから、キャリアカウンセラーは、メンタル面で問題を抱えたクライアントはメンタルの専門家へリファー(引き渡し)することになります。
しかし、現実は私のクライアントの半分くらいがなんらかのメンタルな問題を抱えています。また、メンタルの専門家から「調子が回復してきたから、そろそろ仕事に就くことを考えてみたら」ということで逆にリファーされてくる場合が多いです。
ただし、キャリアカウンセラーとしてはあくまでもメンタルとキャリアの区分けをして対処することになります。なぜなら、メンタル面の治療はキャリアカウンセラーの力量を超えてると考えられているからです。けれども、メンタル面に何もしない訳ではありません。また、そこに厳格な基準が存在するわけでもありません。だから、例えば、認知療法のいわゆるABC理論による積極的介入はします。しかし、認知行動療法は私はしません。
したがって、メンタルの専門家の話を聞きながらの共同作業になります。だから、メンタル専門家や関連機関との連携のなかでキャリアカウンセラーとしての固有の役割を果たすことになります。
大野先生の意見ですが、本人の希望や了解があれば、守秘義務を守る範囲内で、キャリアカウンセラーとして実際的な言動を行ってもいいし行うべきではないか。たとえば、事業主なり、人事なり、所属長なり、窓口担当者なりと本人の間に立って調整する。そうしながら、キャリアカウンセラーとしての社会的信用や立場を勝ち取っていく。それがキャリアカウンセラーの行動範囲であるということでした。
他方、メンタルの専門家は、キャリアの面、つまり仕事や職業に関わるところで対応することはキャリアカウンセラーの力量には及ばない場合が多いように感じました。だから、キャリアカウンセラーしかできないこともあるわけです。そこの穴を埋めていく作業をするわけです。
「派遣」という働き方は残るけど、派遣会社は淘汰されるかも [キャリアカウンセリング]
「労働者派遣法」は、今から20年前の1986年に施行され、2000年に大幅改正された。目的は、派遣労働が「望ましくない働き方」であり、正社員という「望ましい働き方」を確保することにある。
例えば、「労働者派遣法」では契約期間(例えば一年契約を三回まで更新する)を決め、契約期間を過ぎて引き続き働く場合は、派遣会社が派遣先へ正社員としての雇用申込を義務づけている。
だから、「労働者派遣法」では、派遣社員はあくまで正社員になるの前段階と位置づけられている。
また、派遣労働には、次の二つのタイプがある。
①一般派遣
派遣希望者が派遣会社に登録だけしておき、派遣先が決まってから派遣会社に雇用された後、社員として派遣される登録型。求職者にとっては公共の職業紹介機関(ハローワークなど)とは別のもうひとつの職業紹介機関と考えることもできる。
②特定派遣
派遣会社の正社員。正社員であるがゆえに、派遣会社が社会保険料(健康保険、雇用年金等)の雇用主負担分を負担する。
派遣労働は、正社員か無業かの二者択一的ではないもうひとつの働き方であり、運用の仕方次第ではこれからの多様な働き方の選択肢を増やす可能性があると思う。
なぜならば、派遣労働として働く働き方を選択する理由は、労働時間や職種、就業場所、残業がないこと、会社の人間関係に煩わされない等の自発的なものが少なくない。たとえば、家庭やその他の活動との関係から派遣労働の方が得な時期もある。また、働く上で会社の社内政治などの人間関係が苦手だという性格の人もいる。だから、派遣労働の方が合っている場合もある。
一方、「労働者派遣法」の目的通り派遣社員から正社員になりたいと思っている人は、要注意だ。現在、景気がわずかずつ回復しているが、雇用環境は依然として厳しい。つまり、派遣先は派遣社員を簡単には正社員にできないのである。そのため、派遣会社はこの規制を逃れるために敢えて派遣社員を契約期間前に辞めさせることがある。これが現実である。
だから、派遣会社がどんな会社か耳をダンボにして評判を収集して吟味する必要があるだろう。
系統的脱感作とユングの心理学的類型論の合わせ技 [キャリアカウンセリング]
ある研究会に参加してユングのことを教えて頂いた。まったく未知だった私には大変有意義だった。そこで得たことを整理しておきたい。
心の働きにはパターンがある(不規則ではない)
心は二律背反(両立しない)の構造で成り立っている
それゆえ、心はどちらか一方に動く(喩えると、利き手が右なら右利き)
要するに、心の働きには次のふたつがあり、それぞれがどちらかに一方に動く
①知覚機能=情報を集める
感覚(五感や観察)か
直観(イメージやひらめき)か
②判断機能=結論を導き出す
外向思考(その個人の皮膚より外=べき論)か
内向感情(皮膚よりなか=気持ち)か
したがって、たとえば「知覚は感覚で、判断は内向感情」のパターンや「知覚は直観で、判断は外向思考」のパターンなどがある。
勉強不足を棚に上げても、知覚と判断、直観と感覚、外向思考と内向感情は同時に存在しないという二律背反はかなり腑に落ちる。
これは、系統的脱感作の前提と同じである。つまり、人は同時に相反する精神状態にはいられないという。たとえば、リラックスと不安は同時に存在しえない。これを使って、リラックス状態のままで細かいステップを繰り返しながら不安がなくなるまで練習する。
つまり、系統的脱感作の技法でユング式心の動きをチェックしてみれば効果的だと思ったのだ。
定職→適職→天職の順番で行こう! [キャリアカウンセリング]
この仕事をしていると、ものごとに順序があるように、職業選択にも順番があるような気がします。
①定職…定期的な収入がある職業
②適職…生きるための最善な職業
③天職…こころの満足を得る職業
なずけて、①ホップ、②ステップ、③ジャンプの「三段飛び方式」(いまいち?)
キャリアカウンセリングルーム [キャリアカウンセリング]
何を思ったか、写真を載せたくなったのでとりあえず「カウンセリングルーム」をアップしてみました。
これで載せ方がわかったので、また何か写真を入れようかな~、なんて(でも、どうかな~)。
何でも一度にやろうとしてしまわないこと [キャリアカウンセリング]
キャリアカウンセリングをしていると、下記のようなタイプの方がいます。
○やりとり、交渉が苦手で、どうしても相手の言い分に合わせてしまう。
○お客さんの要望も、会社の指示も、どっちもなんとか満たそうと無理してしまう。
○いくつもの仕事ややらなくてはいけないことを抱え、それを全部一気にやろうと思ってしまう。
自分と相手、相手と相手、ものごととものごとの間で大きなストレスを感じ、その傾向が高じて、心の不調を呈するほどまでにいき、自滅してしまうタイプです。その状況は共通しており、いわゆる板挟み、サンドイッチ状態になったときです。
こういう人は気質だからしかたがないのかもしれませんが、うまく対処できればそれに越したことがないと思います。では、そのためにどうしたらいいでしょうか? それは…
①両方にいい顔しようと思わない。一度に何でもやろうと思わない。
②相手は相手、自分は自分と区別する。オレ流(落合監督!)と割り切り、マイペースを通す。
③何らかの価値基準で重要度や優先順位を決める。時間軸でものごとを整理する。
(あんまり、参考にならないかな~)
「見立て」と「手立て」が肝心なんだと思います。 [キャリアカウンセリング]
(メモです)
キャリアカウンセリングでは、次の二つがとても大事だと思います。
見立て=目的
手立て=方法
職業的な自己理解を深めてもらうための私の方法 [キャリアカウンセリング]
キャリアカウンセリングプロセスは、次の7つのステップである。
①意志決定の必要性の自覚
②自己の再評価
③職業・仕事の特定
④選択肢に関する情報収集
⑤仮決定
⑥学習・訓練
⑦就職・転職・異動・創業
この中の②の自己の再評価で、私は次の三つの切り口からクライアントにアプローチを試みる。
①関心
②能力
③価値観
そして、それぞれに、次のような方法を用いる。
①関心→CPS-J簡易版
②能力→強み(長所)と弱み(短所)
③価値観→バリューカード
これらの作業をクライアントと一緒にしながら、クライアント自身の自己理解を深めてもらう。
そこから、③の職業・仕事の特定へ進む。そこで、「やってみたい、やってもいい」という職業をできるだけたくさん(実際にできるできないは棚上げして)抽出する作業へ移行する。
批判に対応する効果的なスキルを示すこと [キャリアカウンセリング]
全米キャリア・デベロップメント・ガイドライン-能力および指標 幼稚園から成人まで-(1996)は、キャリア発達のそれぞれの段階に必要な能力を列挙している。例えば、中学生は「仕事と学習の関係を理解する」などの12の能力がある。
私は、現在、主に働きたくても働けない若者のカウンセリングをしている。その経験から、中学生の段階で育成が必要だと感じる能力が「他人とポジティブにやりとりするスキル」であり、特にそのなかの「批判に対応する効果的なスキルを示すことができる」力だと思う。
なぜならば、働きたくても働けない若者に、他人の批判に対して「効果的なスキルを示す」(=反論できる)能力のある人が少ないように思うからだ。批判は誰もがいつでも受けるのが当然だと考えた方が自然であり現実的だと思う。しかし、そう思えない若者が少なからずいる。そのことと働けない状態にあることが相関関係にあるように感じる。
実は、批判は否定とイコールではない。批判は、結論として否定するとは限らない。肯定することもある。むしろ肯定的批判が重要である。例えば、わからないことや説明不足だと思うことを質問することは立派な批判の一つだし、おかしいと感じるところや論理的に弱いと思うところを指摘することも批判である。
こういう批判にわが身をさらすことは苦痛だ。しかし、そうして成長していくものではないだろうか。特に若いうちは周囲の批判を受けることが多い。それでも、ひ弱ながら反論しつつ、自分の意見を現実に適応させ高めていくものだろう。それは、大人という他人との共同作業とも言える。
働きたくても働けない若者はそういう場面を大の苦手としている。そういう場面はできるだけ回避する傾向がある。それは、まさに「批判に対応する効果的なスキルを示すことができる」力が弱いからではないだろうか。ではなぜ弱いのか? まずは「批判」の意味を正しく理解していないこと。次に批判に対応するスキルを教えてもらっていないことがその理由である。
また、なによりこの批判の能力は自分に対して批判する能力でもある。これが弱いと当然自分で自分の考えに対して批判ができない。つまり自分で自分の考えを効果的に高めていくことができない。
職業的発達段階の探索期の必要性について [キャリアカウンセリング]
ドナルド・E・スーパーは、人の職業的な発達を次の5つに区分した。
①成長期(0~15歳)
②探索期(16~25歳)
③確立期(26~45歳)
④維持期(46~65歳)
⑤下降期(66歳~)
若年者の就労支援とは成長期から探索期への節目に立ち会うことではないかと思う。
探索期は職業についての希望を形作っていく実践試行の時期であり、成長期は職業世界に対する積極的な態度を養い、働くことの意味について理解を深める時期である。成長期から探索期への移行を促すのが就労支援の主たる内容になる。
ところがうまく探索期に移行できずに成長期にとどまるケースも少なくない。年齢だけをみると、確立期の年齢でも探索期を経ていないために無理が生じる。そのため、人工的に探索期をこしらえる必要がでてくる。そこで、就労支援プログラムが必要になってくる。
職業人生上の目標と方法の存在 [キャリアカウンセリング]
キャリアカウンセリングのはじめの段階で確認していくようにしているのが、クライアントの目標と方法である。特に目標(相談にきた来談目的)は、最初は漠然としてでもいいからあって、かつそれがカウンセリングごとにあまり大きく変わらないことが肝要である。
では、その目標はどのようにして考えていけばいいのだろうか。言い換えれば、職業人生の目的地や行き先はどう考えていけばいいのだろうか。この場合にお薦めしたいのが、「should」と「want」で考えるという方法である。「should」はクライアント自身がおかれている状況で自分は何をなすべきかという必要性であり、「want」は自分はどうなりたいかという願望である。この二つである。
例えば、30歳の男性がいるとする。その男性は、妻子もあり、家族を養うだけの生活費を稼ぐ必要がある。これは、「should」である。また、その男性は自分の関心のある分野で仕事をしたいと願っている。これは、「want」である。そうすると、その男性の目標は、関心のある分野である程度の収入が得られる仕事に就くことが目標となる。
目標の次は、その目標を達成するためにはどうしたらいいかという方法である。その方法をクライアントとキャリアカウンセラーとで一緒にみていくことになる。
このようにして、キャリアカウンセリングではこの目標と方法を常にクライアントとカウンセラーが意識していることが大切なように思う。
仕事選びの三つのポイント [キャリアカウンセリング]
仕事選びには次の三つのポイントがあります。
①個性の発揮や自己実現を仕事に求めるのか、求めないか。
②長い職業人生で自分は今、誰を楽にできるか? 誰の端を楽に(ハタラク)できるか?
③やらないより、どんな些細なことでもいいからできることをやるか、やらないか。
特に、仕事に個性の発揮や自己実現を求める人は、まずできることをすることです。それでは‥
<スタート>
①自分にできることをする→②誰のためにするか決める→③入り口の前まで行く→④仕事の扉をノックする→⑤とりあえず、中に入る→‥→‥→‥→‥→⑱個性を発揮する→⑲結果:自己の実現
<ゴール!>
個性は、普遍的なものを求めながらにじみ出る他者との差異で、他者が見出すものです。
自己の実現は、自分の他の人がいて成立し自己を実現するには相当時間がかかります。
又、「自分らしい」「あなたらしい」仕事をするには、行動-体験-経験-実績が必要です。
個性の発揮や自己実現を仕事に求める考え方は、仕事=目的(-成果)です。
個性の発揮や自己実現を仕事に求めない考え方は、仕事=手段(-別の成果)です。
個性の発揮や自己実現を重視する教育はあっても、それを仕事に結び付けては短絡的です。
あたり前のことをあたり前にやる [キャリアカウンセリング]
プロとは、あたり前のことをあたり前にやる人のことらしい。
プロのキャリアカウンセラーのあたり前のことは何か。
クライアントの来談目的を果たすことである。
では、あたり前にやるにはどうしたらいいか。
カウンセリングの前段階は、基本的なスキルを持つこと。どうしたらクライアントを支援できるか常に考えること。難しいことを学んでおくこと。
カウンセリングの実際の場面は、やさしく考えること。気負いや力みがないこと。自分に素直になること。自分を飾らないこと(飾れば人は逃げていく)。
あたり前のことをあたり前にやることは難しい。
でも、春になるとあたり前のように花は咲く。
今日、庭に咲いたチューリップを見て尊敬してしまった。
情報判断技能を高める [キャリアカウンセリング]
昨今、私たちは大量の情報をすばやく処理することが求められています。認知心理学では、情報処理の脳の働きを短期記憶貯蔵庫と長期記憶貯蔵庫の二つの貯蔵庫でモデル化しています。短期のそれで一時的に保管し、必要に応じて長期のそれとすり合わせます。また、短期と長期の間にメンタルモデルという心の世界があるとしています。
情報が脳に入力されると、まず短期記憶貯蔵庫に入ります。この貯蔵庫に入った情報は、理解されると長期貯蔵庫に入り消化されます。しかし、「意味がわからない」「理解できない」情報は、短期貯蔵庫の容量が有限なので、ある程度負荷がかかると負荷を下げたい衝動に駆られます。したがって、消化しきれないで短期記憶貯蔵庫から外されることになります。
短期貯蔵庫と長期貯蔵庫の間に存在するのが、メンタルモデルです。メンタルモデルは、「とりあえず、こういうものだ」という仮想貯蔵庫です。ここでは、入力された情報を関連させたり、予測したりして、短期貯蔵庫と長期貯蔵庫の間のやりとりをすばやく行います。
長期貯蔵庫は、私たちのこれまでの経験や学習によって得られた物の見方や考え方です。これは、無限に貯蔵することができます。価値観や興味・関心、自己イメージなどが貯蔵されています。短期貯蔵庫に入った情報は、長期貯蔵庫のなかの情報と同化、調整されて蓄積されていきます。
短期貯蔵庫-メンタルモデル-長期貯蔵庫というプロセスを経ながら、私たちは入力された情報に対して反応します。行動の変化、保留、無視、不快(ストレス反応)などの反応があります。これらは、固有のものであり能力によって違います。
自分の納得できる反応をするためには、長期貯蔵庫の整理や新しい学習や訓練が必要です。情報過多の昨今において、的確に判断をしていくには操作的な情報処理技術だけでなく、自分を深める学習や訓練をしながら情報判断技能を高めることが大切だと思います。
※先日、任天堂DSの脳内トレーニングをしたら脳内年齢が75歳(実年齢43歳)でした(ガ~ン)。
フランスの新雇用制度 [キャリアカウンセリング]
どうやら、フランスでは「26歳未満を雇えば2年は理由なく解雇できる」法律をめぐって、3月28日(今日)「全国行動日」として、大規模なデモが行なわれるようです。
仮に、日本で同じような法律が施行されたらどうなるか‥考えてみました。
日本は、労働基準法第15条により、使用者は労働者を採用するときには労働条件を明示しなければならないことになっています。特に、賃金や労働時間、退職に関する事項は必ず明示しなければならない事項で、これらは書面を作成し交付することが義務付けられています。
つまり、フランスの新雇用制度と同様な法律が施行されれば、退職に関する事項のなかの「解雇の事由等」を26歳未満を雇い入れた場合明示(書面交付)する義務がない、ということだと思います。
フランスのドビルパン首相(05年6月就任)のすすめるこの新雇用制度(CPE=「Contrat Premiere Embauche(初期雇用契約法)」)の目的は、事業者が若者を雇い入れやすくすることです。現在、すでに小規模の事業所には認められており、それによって若者が雇入れやすくなり、雇用も確保されているようです。
雇用契約は、使用者と労働者どうしの契約であり、小さな事業所では互いの交流も深いこともあり、必ずしも解雇されることになるわけではなく、解雇されたとしても話し合いの場があるのが現実ではないかと思えます。
ところが、これが大きな事業所になると、こうはいかないでしょう(と思えるのでしょう)。そして、この新雇用制度に反対している若者は、もとは大学のインテリゲンチャ(死語かも?)の一部で自身の雇用が確保されない、つまり安定志向が崩壊されることに対する反発だったと思います。事実、一部の若者のなかにはこの新雇用制度に賛成する人もいます。
現在、フランスだけではなく、世界的規模で雇用環境の自由化の流れは進んでいます。これはもう避けて通れないと思った方がいいのではないかと思います。その上で、自分自身どのような職業人生を送るのか、自分のキャリアというものをどう考え、それを軸にどう職業人生を積み上げていくかを考え行動していく時代が来ているような気がします。
そこに介入するのが、キャリアカウンセラーやキャリアコンサルタントといわれる人達です。自分一人で、キャリアプランニングをしていくことは不可能です。専門的なスキルをもった人に相談することがまず第一歩です。
なので、マイジョブのキャリアカウンセリングをご利用くださいませ。(って、そういう話?PRじゃん‥)
http://www.toyamav.net/~myjob/career.htm
臨床心理学とキャリアカウンセリング [キャリアカウンセリング]
昨日、富山大学人文学部心理学教室主催の地域連携プロジェクト「心理学の現在と可能性」を聞いてきました。以下の3人の先生の発表でした(私なりにまとめてみました)。
<テーマ> <分野> <対象> <課題> <講師>
どうみえるか →認知心理学→主に視覚→だから何の役に立つの 県立大 井戸啓介先生
どうとらえるか→社会心理学→社会状況→人間行動との因果関係 富山大 黒川光流先生
どうきくか →臨床心理学→クライアント→医者の観点との葛藤 富山大 岸本寛史先生
一番驚いたことは、実は最後の岸本先生の肩書き。「保健管理センター 助教授」?。「保健管理センター」って、アルバイト情報の掲示板がある施設じゃなかったっけ。在学中(私、富大出身です)、よくここを利用していました。なのに、なのに、なのに(リピートすな!)。
「研究室」があるとは‥。知らなかった、知らなかった、知らなかった(しつこい!)。ネットで調べると、所長は斎藤清二先生(もと医薬大)で有名な方らしい。その先生と岸本寛史先生は一緒に研究されているとのこと。おいおい、すると、ここは大学内の病院ってこと?いや、少なからずお悩み相談室?このような施設まであるとは。恐るべし富山大学。しかも、相当なレベルと見た。ここは、私に言わせれば、「臨床心理学の知の倉庫だ」(あまり知られていないので、宝庫じゃないところが悲しい)‥。
キャリアカウンセリングプロセス [キャリアカウンセリング]
20代の若年無業者のパターンは前の経歴で4つに分類でき、それぞれ25%になる(私の経験で)。
①高卒組‥不登校、学校を休みがち
②中退組‥授業に違和感を感じて自発的に、単位取得できずやむなく
③卒業組‥就活の出遅れが響く、就職(就社)に違和感をもつ
④離職組‥不本意就職、むりやり就職、転職のくりかえし
※中退、卒業は高等教育(大学、大学院、短大、専門学校等)をさす。
これに対処する基本パターン(道筋・手順)は、次のようなプロセスを踏むことだ。
①キャリアカウンセリング
②職場体験・ボランティア体験
③アルバイト・パート
④エントリーシート・職務経歴書の作成
⑤志望動機の作成
⑥面接
⑦採用
⑧入社初日~二日目~一週間
よく「どうやって仕事をきめればいいかわからない」という相談がある。それには、上記プロセスがその答えだか、その目的は<自分の中に欲を作り出すこと>である。低い職業レディネス(働こうという意欲)を高めることに他ならないし、そうしないと最終的な意思決定までには至らない。
だた、これは個々の心情については捨象している。つまりあくまで一般論。したがって、職業人生一般についての悩みや相談は、当マイジョブ、お近くのキャリアカウンセラー、ヤングジョブ、ハローワークの職業相談員の方に、とにかくなんでもいいから話ししてみることが肝要。それが第一歩。
「働く」ということ [キャリアカウンセリング]
先日、こどもと本屋さんに行ったら、こどもが偶然「ゲームの攻略本」をみつけたという。その本は1200円。こどもにはおこずかいがある。しかし、そのおこずかいはもってきていない。さあ、どうする。
こどもは、それがよほど欲しいのか、うろうろしている。私は、「今度来るときに、おこずかい持ってきて買う」か「私からお金を借りて、家に帰ったらその分のお金を返す」の二つの選択肢があることを伝えた。また、もうひとつ選択肢を提示した。「一緒にお風呂に入ったとき、私の背中を1回につき100ゴシゴシする。それを12回やったら、本のお金、出してあげてもいいよ」と提案してみた。
そしたら、しばらく考え込んで、「いいよ」と言ってゴシゴシに同意した。私は、こどもに1200円渡し、こどもは1200円で本を買った。そして、その夜こどもは私の背中を洗ってくれた。「あと11回だね」ってこどもは言った。それに「1回に1200ゴシゴシすればよかった」と冗談も言った。
私は1200円、こどもに投資した(?)。こどもはそのお金で本を買った。私は1200円で背中がすっきりしてもらえる権利を得た。そして、こどもが背中を洗うということをきちんとするようになった。こどもは、本を手に入れた。また、自分のおこずかいを減らさずにモノを手にする手段を知ることができた。
このことで、二人の交流が深まった。誰が得して誰が損したわけでもない。みんな得したような気がした。お互い1200円以上の価値があったような気がする。これが「働く」という意味では‥と感じた。